東京・府中刑務所では、刑務作業の工場まで歩いて移動することが困難な高齢受刑者のために、「養護工場」と呼ばれる専用の居室が用意され、約70名が収容されている。同所の刑務官はこう語る。
「対象の受刑者は、居室内で寝起きし、刑務作業も行ないます。居室にはテレビが備え付けられており、毎日16時から認知症予防のストレッチ体操のDVDを再生して運動しています。さらに週1回、理学療法士の指導のもと、セルバンド(ゴム製の紐)を使った体操にも取り組んでいる。
こうした一連の取り組みを、我々は『健康運動指導』と名付けています。対象の養護工場の受刑者たちは、3か月に1回の体力測定の結果、握力が回復しました。握力は認知症と深く関係すると考えられている。運動でお腹が空くので、栄養士が考えた食事も食べる量が増えた。1回15~20分程度の運動ですが、毎日やることで効果があるようです」
■取材/末並俊司、高橋ユキ
※週刊ポスト2018年5月25日号