トランプ米大統領は5月17日、米朝首脳会談で北朝鮮が非核化を受け入れれば金正恩体制を保護する用意があると言及した。だが、北朝鮮は過去にも南北の非核化宣言に調印しながら、核関連施設の立ち入り調査をめぐる米朝交渉を拒否し、自ら反故にした歴史がある。果たして、今回は米朝首脳会談を成功させ、北朝鮮の非核化を証明する段階まで進展させることはできるのか。朝鮮半島問題研究家の宮田敦司氏が予測する。
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北朝鮮の非核化実現には多くのハードルがある。例えば、北朝鮮が核を完全に廃棄したことを証明するためには、米国や国際機関の調査団が様々な施設に立ち入って調査を行う必要があるという点である。
北朝鮮では重要な施設の多くが地下に建設されている。韓国国防部(国防省)によると、北朝鮮には8200の軍事関連の地下施設があり、これらの施設の総延長は547kmになるという(出所/「中央日報」電子版、1998年12月9日)。
これらの施設を全て調査するためには、かなりの時間と人手が必要となるわけだが、北朝鮮がすべての施設の調査に応じることは考えにくい。重要な施設については調査を拒否するだろう。
地下施設の調査については、米国には苦い経験がある。
1998年11月から1999年3月にかけて、核関連施設の疑惑があった金倉里地下施設に対する立入調査(査察)をめぐり米朝で交渉が行われた。北朝鮮は要求を拒否し続けたが、最終的に食糧60万トンを支援することで交渉は決着した。それから2か月後、金倉里地下施設で調査が行われた。しかし疑わしいものは何も発見されなかった。
このように疑惑のある施設を一つ調査するために、多くの時間と費用が浪費されることになる。今後の非核化の過程で同じ事が起きないとは言えない。金倉里の例と同様に、疑惑のある施設の調査を行うために、何も発見できない恐れがあっても見返りを北朝鮮へ提供せざるを得なくなるだろう。