今やテレビで見ない日はない勢い
若手の頃から同世代の落語家の中では人気・実力ともに抜きん出ていたが、志らくとともに立川流の出世頭となる兄弟子の志の輔、談春には、その後知名度という点で水をあけられた。
「志の輔兄さんが『ガッテン!』(NHK)でどれだけ売れようが、談春兄さんが書いたエッセイ『赤めだか』がいくらヒットしようが、周りがライバルだと煽るだけでジェラシーという感情を持たなかった。むしろ、今は私の方が落語界に貢献しているのではないかという自負がある。昼のテレビに毎日着物で出演するのは、落語に関心のない人たちに落語を意識させるきっかけになるからです。テレビで私は敢えて醒めたコメントを意識していますが、それは『常に笑いを取ろうとする』という一般的な落語家のイメージを崩したいからです。これだけ落語界のことを考えているんだから、表彰してもらいたいくらいです(笑い)」
落語を愛してやまない生粋の“落語バカ”立川志らくがこの道に入ったのは、育った家庭環境が少なからず関係している。長唄の師匠の母とクラシック・ギタリストの父。とくに落語好きだった父の影響は大きかった。
「中学生の時に父と一緒に見たNHK『なつかしの名人会』という番組で、三代目三遊亭金馬師匠の『薮入り』が衝撃的でした。父の本棚にあった落語全集を漁るように読み、名人たちのレコードを毎日聴き、寄席にも通うようになった。だから今でも当時覚えた落語はまくらから全部コピーできます」
16年かけて203席を演じる予定で、2015年から始めた独演会「立川志らく落語大全集」のチケットは、発売即完売というからその人気のほどがうかがえる。