労基による“ガサ入れ”の結果、A氏の工場で残業代など、時間外労働への賃金の未払い、定められた時間以上にスタッフに労働を課していたことなどがすべて指摘され、工場の操業停止を余儀なくされた。
「誰が“チクった”なんてどうでもいいんです。女性スタッフもみんな泣いてました。遅かれ早かれこうなることはわかっていた……」
研修生たちは、一部が別の工場に引き取られ、大部分は母国へ帰った。業務を以前の10分の一以下にして、細々と業務を続けているが、近く廃業の手続きに入るという。A氏は、よくない例えだが、と前置きして外国人研修制度に頼ったときの心境を振り返った。
「研修生は覚せい剤みたいなものでした。苦し紛れに彼女たちに依存して、何もかもを有耶無耶にして、なんとか会社を潰すまいとしていただけ。工場だけでなく、農家や漁師さんも、同じような状況なんじゃないでしょうか」
東京都内の複数のコンビニ店オーナーである坂本益男さん(仮名・五十代)も、すでに外国人がいないと会社経営が成り立たないと漏らしつつ、我が国はすでに「移民国家そのもの」になったと断言する。
「移民の是非を政府が検討しているでしょう? 全くバカげています。すでに日本は移民国家。都会のコンビニに行くと、ほとんどの店に外国人のスタッフがいますよね。うちも五割以上が外国人。日本人は時給900円のコンビニなんて働きたがらない。人手不足だ、というのも、企業が給料を多く支払えないから人が来ないだけです。だからそこに外国人が来る」
坂本さんの経営するコンビニ全店舗に、中国人や韓国人、ベトナム人にタイ人、ブラジル人など多くの外国人が在籍している。全員が、語学習得のために来日中の留学生であり、働ける時間も制限されているが、やはり、法律によって蔑ろにされている面は否めないともいう。
「店側は人が足りない、留学生はもっと働きたい、両者のニーズがぴったり合致する。するとどうするか。こっそり働いてもらうことになりますよね。コンビニ業務が“実習”の対象になる、なんて政府が検討していますが、そうでもしないと“回らない”ということを理解しているからでしょうし、取り締まりではどうにもならない状況になっているからです」
コンビニだけではないだろう。飲食店や小売店など、日本人が敬遠しがちな低賃金、長時間勤務を強いられる現場で、もうすでに多くの外国人が働いていることは、今更だれも否定できないれっきとした事実。人口減少がすすむ日本では、労働力を確保するために外国人に頼らないとならないのは明らかだ。外国人でも日本で働き、税金や保険を払ってでも日本で暮らそうと考えたら、それを選べる制度を本気で考える時期が来ているのではないか。