宝塚「月組」男役トップスターの龍真咲(撮影/浅野剛)
林:入ろうと思って入れる場所ではないのに、あの高倍率をくぐり抜けて合格して、しかもトップにまで上り詰めるなんて。もうそれだけで素晴らしいですよ。ちなみに龍さんにとって運命の舞台となった『風と共に去りぬ』ではどなたがスカーレット役を?
龍:私が観た舞台では真琴つばささんでした。役替わりで複数のキャストがいたそうですが。
林:宝塚の舞台ではキャストが代わると、やっぱり演出も変わってくるんですか?
龍:はい。宝塚の『風と共に去りぬ』は、スカーレットの目線で展開するバージョン、レットの目線に立ったバージョン、それから両方の視点から物語が描かれる3パターンがあって、それぞれに応じて演出や内容もだいぶ変わってくるんです。ですから、1つの作品としてすごく奥が深いんですね。
◆世界文学全集で初めて読んで華やかな世界に焦がれて泣いた
林:こうして至近距離でお話ししていると、龍さんは本当にスカーレットのイメージそのまま。『風と共に去りぬ』って私たちの世代にとってはバイブルなんですよ。スカーレットに憧れていた、レット・バトラーが初恋だった、という50代女性は多いと思いますよ。
龍:林さんが初めて『風と共に去りぬ』をお読みになられたのはいつでしたか。
林:中学2年生の時。世界文学全集で読んで、もう本当に衝撃を受けちゃって。山梨県の田舎の平凡な家庭に生まれ育った少女だったので、「自分はこんなドラマチックで華やかな世界に、一生触れることなく生きていくんだろう」と思ったら、悲しくて泣いちゃいましたもん。その後で映画版も観たのですが、もう本当に刺さっちゃったんです。とにかく主人公であるスカーレットが圧倒的に魅力的で。
龍:わかります。もしスカーレットが現実にいたら、すべての男性がきっと彼女を好きになってしまいますよね。
林:女性からは嫌われるかもしれないけど、それも含めて最高にいいキャラクター。実の妹たちからも嫌われているヒロインって、なかなかないでしょう(笑い)。作者のマーガレット・ミッチェルは、よくもこんなすごい女性を創造したな、って感心してしまいますよ。
※女性セブン2018年6月21日号