──学校で金正恩委員長について何と教わる?

「偉大なる方、白頭山の息子と教わります。『パルチザンの息子』という歌も教わります」

──インターネットは使うか。

「インターネットは使用できません。パソコンでゲームをしている。いま最も欲しいのは、自動車、携帯電話、お金」

──大学に入ったら、何を勉強したい?

「学びたいことは沢山あるが、お金がなくて大学に行けない。勉強をよくしてもお金があってこそ大学に行ける。親を継いで漁師をするつもりです」

 11年12月、金正恩委員長が北朝鮮の最高指導者になった直後から現在まで5回程度、北朝鮮の住民約50人から直通電話で話を聞いてきた。ところが、6年が過ぎた今日も彼らの生活から変化は感じられない。制裁で住民の暮らしは以前より大変だという。

 ただ、資本主義の波は相当浸透している。住民はもう頭の中では自由主義の文化に生きているのに、体は何十年前の封建社会の統制を受けている様子だ。この精神的混乱と乖離を金正恩委員長はどう思っているのか。歴史的なトップ会談を経ても、どうも見通しは明るくなさそうだ。

●パク・スンミン/時事通信の元ソウル支局記者。長年、北朝鮮問題と韓国政治を取材。その間に平壌と開城工業団地、金剛山など北朝鮮の現地を5回ほど訪問取材。現在、韓国と日本のメディアに寄稿している。

※SAPIO2018年5・6月号

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