芸能

D・フジオカ『モンテ・クリスト伯』は視聴者を試す復讐劇

満足度は回を追うごとに上昇d(番組公式HPより)

「賛否両論」は、昨今のヒット作のキーワードだろう。フォロワーもアンチも巻き込んで大きなうねりが発生した時、その作品はヒットの称号を得る。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が注目のドラマについて指摘する。

 * * *
 遠くまで見わたせる海。背後のボケ味が美しい。船、漁港、市場とロケを多用した匂いたつようなシーン。まるで額縁の中の絵のような映像を背景に、しかしピリピリと漂う緊張感。ドラマ『モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-』(フジ系木曜)がいよいよ今夜9時、拡大版2時間となって最終回を迎えます。

 このドラマ、「異色作」と呼んでもよいのではないでしょうか? あるいは、視聴者が試される「リトマス試験紙」とも。なぜなら、ザテレビジョンの視聴熱調査やテレビウォッチャーの満足度調査では高得点を叩き出し、満足度は回を追うごとに上昇し絶賛される一方で、「ずっこけドラマ」などと極端な酷評も見られるからです。こうもくっきりと評価が分かれるドラマも珍しい。

 いったいこの分裂、何に由来しているのでしょうか? このドラマは何を浮き彫りにしているのでしょう?

 原作は19世紀のフランス小説『モンテ・クリスト伯』。日本では『巌窟王』で知られる復讐の物語。その屋台骨の「復讐」という筋は保持しつつ、ディテイルは大胆な翻案によって現代の日本に置き換えられています。

 主人公は、片田舎の小さな漁港で漁師をしていた柴門暖(ディーン・フジオカ)。ある日、テロリストとの関係を疑わわれ逮捕されてしまう。結婚直前の幸せを破壊され奈落に落ちる。15年間も監獄に幽閉された後、柴門は脱出に成功。大金を手に名前を変え、「モンテ・クリスト・真海」という別人物として戻ってくる。自分を陥れた人々に復讐するために。

 そのモンテ・クリスト・真海の姿は……口髭、きっちりとなでつけた髪、スーツ。豪邸に住むシンガポールの大富豪であり投資家。日本語を話すけれど、どこか英語なまりの語尾。うさんくさくて浮き世離れしていて、背後に何かを隠していそう。

 徹底的にキッチュな役柄で「作り物」の面白さを際立たせています。そんな「モンテ・クリスト・真海」の存在をめぐって、視聴者の反応が四分五裂。キッチュな作り込み感が面白い、柴門がモンテ・クリスト・真海を演じる二重性を「フィクションならでは」の醍醐味と感じて楽しむ人もいる。その一方、不自然だと全否定する意見や拒否反応を示す人も。

 特に視聴者の間で議論になったのは、「柴門暖が姿を変えモンテ・クリスト・真海として現れた時、誰もその正体に気づかないのはオカシイではないか」という点(正確には元婚約者のすみれだけは最初から気付いていた、という解き明かしがされる)。演出担当の西谷監督は、ディーン・フジオカさんに正面から二役を演じさせた理由についてこう語っています。

「整形したのかとか昔はすごく太っていたのかとか、それを特殊メイクでやろうとかそういうのをいろいろ考えました。だけど、それも全部小手先だし、見る人にとっては同じ役者さんだってわかってるわけだし、そこは堂々といけばいいと思いました……意外と人間って他人のこと覚えてないなと思って」(西谷弘監督「マイナビニュース」2018.6.7)

 西谷監督のコメントで最も興味深いのは、「意外と人間って他人のこと覚えてない」。よく考えるとたしかに、そういう側面はあるかもしれません。

関連記事

トピックス

無罪判決に涙を流した須藤早貴被告
《紀州のドン・ファン元妻に涙の無罪判決》「真摯に裁判を受けている感じがした」“米津玄師似”の男性裁判員が語った須藤早貴被告の印象 過去公判では被告を「質問攻め」
NEWSポストセブン
激痩せが心配されている高橋真麻(ブログより)
《元フジアナ・高橋真麻》「骨と皮だけ…」相次ぐ“激やせ報道”に所属事務所社長が回答「スーパー元気です」
NEWSポストセブン
Instagramにはツーショットが投稿されていた
《女優・中山美穂さんが芸人の浜田雅功にアドバイス求めた理由》ドラマ『もしも願いが叶うなら』プロデューサーが見た「台本3ページ長セリフ」の緊迫
NEWSポストセブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《倍率3倍を勝ち抜いた》悠仁さま「合格」の背景に“筑波チーム” 推薦書類を作成した校長も筑波大出身、筑附高に大学教員が続々
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【入浴中の不慮の事故、沈黙守るワイルド恋人】中山美穂さん、最後の交際相手は「9歳年下」「大好きな音楽活動でわかりあえる」一緒に立つはずだったビルボード
NEWSポストセブン
結婚披露宴での板野友美とヤクルト高橋奎二選手
板野友美&ヤクルト高橋奎二夫妻の結婚披露宴 村上宗隆選手や松本まりかなど豪華メンバーが大勢出席するも、AKB48“神7”は前田敦子のみ出席で再集結ならず
女性セブン
スポーツアナ時代の激闘の日々を振り返る(左から中井美穂アナ、関谷亜矢子アナ、安藤幸代アナ)
《中井美穂アナ×関谷亜矢子アナ×安藤幸代アナ》女性スポーツアナが振り返る“男性社会”での日々「素人っぽさがウケる時代」「カメラマンが私の頭を三脚代わりに…」
週刊ポスト
NBAロサンゼルス・レイカーズの試合を観戦した大谷翔平と真美子さん(NBA Japan公式Xより)
《大谷翔平がバスケ観戦デート》「話しやすい人だ…」真美子さん兄からも好印象 “LINEグループ”を活用して深まる交流
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
「服装がオードリー・ヘプバーンのパクリだ」尹錫悦大統領の美人妻・金建希氏の存在が政権のアキレス腱に 「韓国を整形の国だと広報するのか」との批判も
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《私には帰る場所がない》ライブ前の入浴中に突然...中山美穂さん(享年54)が母子家庭で過ごした知られざる幼少期「台所の砂糖を食べて空腹をしのいだ」
NEWSポストセブン
亡くなった小倉智昭さん(時事通信フォト)
《小倉智昭さん死去》「でも結婚できてよかった」溺愛した菊川怜の離婚を見届け天国へ、“芸能界の父”失い憔悴「もっと一緒にいて欲しかった」
NEWSポストセブン