◆会社の資金も“ドン・ファン口座”
野崎氏の遺産が50億円とした場合、Sさんは約37億円、他の相続人もそれぞれ3億円あまりを手にする計算だ。だが、相続人のひとりは困惑顔でこう話す。
「俺に相続権があるとかで、会う人会う人に『遺産を相続するらしいな』、『大金、もう手に入れたんか』とか言われて困っている。殺人事件だってのに、受け取りにくいでしょ。友人たちは“カネに色はついていないからもらっておけ”って言うけれど……」
相続権とは関係ない野崎氏の会社関係者も遺産絡みで困っているという。
「会社は赤字で、社長がいなくなったので畳まざるを得ないような状態です。しかも社長が亡くなる直前に、社長から『会社の預金を全部、個人口座に移しておくように』と命じられていたので、今や取引先への支払いや社員の給料を払う金もない。このまま会社が倒産することになったら、退職金の支払いを求めて、社長の相続人と話し合うことになると思う」(従業員)
さらに野崎氏は生前、「遺産は田辺市に寄付する」とも話していたという。田辺市市議会の関係者が言う。
「野崎氏と個人的に親交があった市長が、周囲にそう話しているのを聞いたことがある。口約束だけだったにしても、市側が遺贈を求めることもあり得るのではないか」
田辺市に確認したところ、「その件については、お答えしておりません」(秘書課)というのみだった。