国内

「殺処分ゼロ」が“引き取り屋”の暗躍を生み出している状況

殺処分される怯えきった表情の犬たち(写真提供/公益財団法人動物環境・福祉協会Eva)

 空前のペットブームだが、店頭のガラスケージで展示販売される犬猫は、全てに飼い主がつくわけではない。かつて、ペットショップ業者は、売れ残ったペットを自治体で殺処分していたが、平成25年の法改正以降はそれができなくなった。

 昨今、よく耳にするのが「殺処分ゼロ」。殺処分とは、人間に危害を及ぼすおそれのある動物、そして、不要となった動物を行政が殺して処分すること。

 全国の犬猫殺処分数は1974年の約122万頭をピークにその後は減少。2016年は約5.6万頭にまで割り込んだ(環境省調べ)。

 その大きなきっかけとなったのが、平成25年の動物愛護法改正の“終生飼養”の義務の明文化だ。飼育している動物が寿命を迎えるまで、適切に飼育するべきとの方針が打ち出されると、かつて行政の殺処分施設だった各地の愛護センターが、命を生かす施設へと変わり始めた。

◆「殺処分ゼロ」にしても無駄死にする命は減らない

 昨今では、東京都の小池百合子知事(65才)が宣言したように「殺処分ゼロ」を目指す自治体も増えてきた。

 しかし、こうした動きを評価する一方で、殺処分ゼロを安易に掲げるべきではないとの声もある。繁殖力が衰えた親犬・親猫を1匹あたり数千~数万円程度の有償で引き取る“引き取り屋”が、過剰生産と法改正で暗躍している。

「殺処分ゼロの方針のもと、自治体で殺されなかった犬や猫たちが、愛護団体、ひいては引き取り屋に移動しただけでは本末転倒です。

 自治体が引き取りを拒否してしまえば、自治体そのものは動物を殺さずに済むものの、譲渡や飼養の責任を民間に押し付けるのでは意味がない」(『動物環境・福祉協会Eva』スタッフ)

 自治体による引き取り拒否は、引き取り屋の活性化を生み出しているのも事実。たとえ殺処分が回避されたとしても、そこでは劣悪な環境での飼育が待っている。

 また、ある愛護センターでは、一旦引き取られたものの病気やけがの治療もされず、センター内でただ生きながらえているだけという、飼い殺しの状態の動物もいるという。

 本当の意味で“殺処分ゼロ=命を救う”なら、法整備はもちろん、行政側での譲渡先の管理やセンターにいる動物の飼養体制を整えるほか、不妊手術費や治療費を予算化することも必要になってくるのだ。

※女性セブン2018年6月28日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季のナ・リーグ最優秀選手(MVP)に満票で選出され史上初の快挙を成し遂げた大谷翔平、妻の真美子さん(時事通信フォト)
《なぜ真美子さんにキスしないのか》大谷翔平、MVP受賞の瞬間に見せた動きに海外ファンが違和感を持つ理由【海外メディアが指摘】
NEWSポストセブン
国仲涼子が語る“46歳の現在地”とは
【朝ドラ『ちゅらさん』から24年】国仲涼子が語る“46歳の現在地”「しわだって、それは増えます」 肩肘張らない考え方ができる転機になった子育てと出会い
NEWSポストセブン
柄本時生と前妻・入来茉里(左/公式YouTubeチャンネルより、右/Instagramより)
《さとうほなみと再婚》前妻・入来茉里は離婚後に卵子凍結を公表…柄本時生の活躍の裏で抱えていた“複雑な感情” 久々のグラビア挑戦の背景
NEWSポストセブン
インフルエンサーの景井ひなが愛犬を巡り裁判トラブルを抱えていた(Instagramより)
《「愛犬・もち太くん」はどっちの子?》フォロワー1000万人TikToker 景井ひなが”元同居人“と“裁判トラブル”、法廷では「毎日モラハラを受けた」という主張も
NEWSポストセブン
兵庫県知事選挙が告示され、第一声を上げる政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏。2024年10月31日(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志容疑者、14年前”無名”の取材者として会見に姿を見せていた「変わった人が来るらしい」と噂に マイクを持って語ったこと
NEWSポストセブン
千葉ロッテの新監督に就任したサブロー氏(時事通信フォト)
ロッテ新監督・サブロー氏を支える『1ヶ月1万円生活』で脚光浴びた元アイドル妻の“茶髪美白”の現在
NEWSポストセブン
ロサンゼルスから帰国したKing&Princeの永瀬廉
《寒いのに素足にサンダルで…》キンプリ・永瀬廉、“全身ブラック”姿で羽田空港に降り立ち周囲騒然【紅白出場へ】
NEWSポストセブン
騒動から約2ヶ月が経過
《「もう二度と行かねえ」投稿から2ヶ月》埼玉県の人気ラーメン店が“炎上”…店主が明かした投稿者A氏への“本音”と現在「客足は変わっていません」
NEWSポストセブン
自宅前には花が手向けられていた(本人のインスタグラムより)
「『子どもは旦那さんに任せましょう』と警察から言われたと…」車椅子インフルエンサー・鈴木沙月容疑者の知人が明かした「犯行前日のSOS」とは《親権めぐり0歳児刺殺》
NEWSポストセブン
10月31日、イベントに参加していた小栗旬
深夜の港区に“とんでもないヒゲの山田孝之”が…イベント打ち上げで小栗旬、三浦翔平らに囲まれた意外な「最年少女性」の存在《「赤西軍団」の一部が集結》
NEWSポストセブン
スシローで起きたある配信者の迷惑行為が問題視されている(HP/読者提供)
《全身タトゥー男がガリ直食い》迷惑配信でスシローに警察が出動 運営元は「警察にご相談したことも事実です」
NEWSポストセブン
「武蔵陵墓地」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月10日、JMPA)
《初の外国公式訪問を報告》愛子さまの参拝スタイルは美智子さまから“受け継がれた”エレガントなケープデザイン スタンドカラーでシャープな印象に
NEWSポストセブン