そんな崩壊寸前の組織をいかに立て直すか。生き残りをかけた組織防衛の必要性に迫られている財務省の難関が、今度の事務次官や国税庁長官の2トップ人事だろう。そしてその人事にも、官邸支配が影を落としている。
通常、7月におこなわれる各省庁の主要幹部の定例人事は、事前に内閣人事局によって選抜され、6月中旬の閣議で決定される。モリカケ問題で揺れていた昨年は例外として、その前年は6月14日の閣議で、新任の事務次官人事が決定されている。だが、今年は大幅に遅れ、いまだ見通しが立っていない。
「財務省では、次官はむろん局長や審議官が決まらないので、それ以下の人事がすっかり滞っています。そのせいで7月に予定されていた重要政策会議のスケジュールを後ろ倒しにするよう各部局に通達があったばかり。いつもより2週間遅らせていますが、それでも、いまだトップ人事がどうなるのか、見えてきません」
6月の第3週に取材したある財務省主計畑の中堅幹部は、内情をそう打ち明けてくれた。第二次安倍政権で2014年5月に新設された内閣人事局は、官邸による霞が関支配の力の源泉として知られる。加藤勝信や萩生田光一ら首相の側近代議士が歴代の内閣人事局長を務め、昨年8月から警察庁出身の杉田和博官房副長官にその任のバトンが渡された。官房長官の菅義偉の指揮下、1府12省庁の事務次官や局長、審議官といった幹部600人の人事を一手に握り、官僚たちを震えあがらせてきた。
そこに、官僚による政権への忖度が生じ、森友・加計問題に発展した行政の歪みを露呈してきた。本連載「日本を腐らす暗闇」の第1回はまず、前代未聞の公文書改ざんで揺れた財務省のトップ人事を巡る官邸と財務省の攻防から始める。