むろんそれは財務省だけの問題ではなく、政権を直撃する。そんな思惑から、官邸が予定された岡本の事務次官就任に難色を示した。先の主税畑の財務省幹部が続ける。
「岡本新次官の財務省原案に代わり、官邸の意向で出てきたのが、星野主税局長の次官就任でした。主税局長経験者からの次官就任はイレギュラーですが、大蔵省時代の接待スキャンダル(*)で薄井(信明)さんが国税庁長官を経て1999年に就任したときと状況が似ています。主税局長や国税庁長官はスキャンダルとは縁がないので、適任なのです」
【*1998年、大蔵官僚らが銀行や証券会社から「ノーパンしゃぶしゃぶ」などの過剰接待を受けていたことが発覚。7人の官僚が逮捕・起訴された】
いわゆる緊急避難的な1年限りの事務次官のショートリリーフだ。財務省としても、エースである岡本を温存し来年に備えられるので、飲みやすいように思える。
では、なぜ日経が報じたような財務官の浅川の次官抜擢説が飛び出したのか。浅川は主計局勤務も経験しているが、むしろ国際畑が長い。2014年に財務省国際局長、2015年から財務官を務め、国際畑だけに、こちらも身ぎれいだとされるが、理由は別のようだ。
「浅川さんを推しているのは、麻生さん。麻生政権時代の首相秘書官だった浅川さんに対する信頼もあるが、それより財務省の守護神を自任している麻生さんは、なんとか組織を立て直したいという思いが強い。財務省サイドからの要請を受け入れたのだと思います」(同前・財務官僚)