◆エース温存のためなら
「もともと福田さんは、森友問題の責任をとって6月の次官退任という路線が固まっていました。実は5月の黄金週間明けには、官邸に岡本(薫明)主計局長の後任次官就任の原案が提出され、内定する予定でした。ところが、そこへセクハラ問題が起きてしまった。それで完全に人事が狂ってしまったのです」
そう説明するのは、主税畑の別の財務省幹部だ。
財務省では、国家の予算を預かる保守本流の主計畑からの次官就任が、なかば既定路線になってきた。財務省の事務次官レースを勝ち抜くには、主計官、主計局次長、官房長、主計局長といった重要ポストの役職経験が不可欠だとされる。
岡本は2006年から3年間、主計局主計官を務め、2012年に主計局次長、2015年官房長、昨年7月に主計局長の任に就いた。いわば財務省にとって、エース中のエースであり、事務次官就任は、順当な人事といえる。
だが一方で、森友問題が騒ぎになった官房長時代の最後の半年は、国会対応責任者として奔走した。いわば森友問題の当事者だ。
おまけにセクハラ問題のせいで、次官の就任が前倒しになると、着任早々、公文書改ざん問題の調査発表に直面する。ただでさえ、ボロボロになっている財務省で、再起を託されて登板したエースが、火だるまになる危険性があったのだ。