それから1週間経った10日、その日経が、唐突にこう報じて関係者を驚かせた。
〈財務次官に浅川財務官 財務相が方針〉
日経とともに共同通信が、事務次官の最有力候補として財務官の浅川雅嗣(60)と報じたのである。福田の後任事務次官として主税局長の星野を挙げる朝日や読売に対し、財務官の浅川を名指しする日経と共同。7月の定期異動が間近に迫った財務省事務方トップの次官人事で、有力紙の人事報道がこれほど決定的に割れた記憶はない。いったい何が起きているのか。
安倍一強政治の下、首相官邸によって霞が関が支配されているといわれて久しい。支配の対象は、日本最強の頭脳集団といわれる財務省も例外ではない。
図らずもそれを如実に物語っているのが、昨年来の森友学園問題だった。およそ8億円も値引きして国有地を払い下げた財務省は、土地取引における首相夫人と森友学園の不可解な関係に悩んだ末、あたかもそれを隠そうとしたかのような公文書の改ざんに手を染めていった。ときの理財局長だった前国税庁長官の佐川が安倍政権を守り抜こうとして無謀な犯罪行為に走ったのは、誰の目にも明らかだ。
挙げ句、組織そのものが揺らぎ、財務省は解体論まで取り沙汰される始末である。旧大蔵省時代から、ときの政権の政策を導き、首相を動かしてきた財務省は、往年の威光がすっかりナリを潜め、見るも無残というほかない。安倍一強政権に功罪があるとすれば、財務省の体たらくは、間違いなく罪の象徴ではないだろうか。