◆殺人現場の血だまりは話題のスイーツと一緒
新幹線殺傷事件では、言葉だけでなく、写真もSNSで拡散された。車内の血だまりなど、殺害現場の写真を撮影し、ネットにアップする人が次々と現れたのだ。
尊い命が奪われた凄惨な現場で悠然と、ともすれば喜々として見えるかの表情で、スマホを構えてパシャリと撮り、誰でも見られる場にアップする。これこそ、「非常識」と“炎上”しかねない行為である。しかし中川さんはこう話す。
「事件や事故の写真をSNSにアップするのは、今や普通の行為になりつつある。珍しい光景に遭遇したら、“撮らなきゃ損”とばかりに撮影するのは当たり前。それがかわいらしいスイーツであれ、殺人現場の血だまりであれ、何も変わりません」
10年前の秋葉原通り魔事件では、現場の写真をケータイのカメラで撮る人々が「異様な光景」として新聞やテレビで報道され、大きな批判を集めた。それから10年間、ネットをめぐる環境も社会の在り方も大きく変わった。
「当時はネットに写真をアップするのにデジカメで撮影したのならば、自宅に帰ってPCに繋ぎ、ブログやmixiで公開するまでのタイムラグがあった。ガラケーだと画質が悪く写真としての鮮明さは雑だった。しかし今は、スマホもツイッターもインスタグラムもあるため公開があっという間にできるようになりました」(中川さん)
そのうえ、既存のマスコミが、SNSにアップされた動画や写真に頼るようになった。事件や事故の現場を素早く投稿してマスコミの目に留まれば、情報提供料をもらえる可能性も出てきたのだ。
「身近になり手軽になり、おまけに報酬ももらえるかも、ということで、誰でも何でもネットにアップすることが日常になりました」(中川さん)
報酬に加え、単純に「珍しい写真をアップして目立ちたい」という動機もある。筑波大学人間系教授の原田隆之さんが言う。
「画像をアップすると傷つく人がいるかもしれない、とは少しも想像せず、“これをアップすれば注目を集められる。すごいと思われて目立つ”という単純な理由で投稿する人ばかりです。そうした人々は、自分の投稿が不特定多数の人に発信されているという意識が希薄です」
※女性セブン2018年7月19・26日号