吉田は現在も、選手兼任コーチという立場で全日本合宿にも参加している。至学館大学での練習にも参加はしているが、タレント活動がかなり多くなっているため、明らかにその時間は減っている。監督就任となればタレント業は減らさざるを得なくなるだろう。キャリアデザインの大きな変更を迫られる。
監督を引き受けるとなったら、生活や仕事に関するいくつもの決断を迫られることになるが、最もつらいのは、厳しい態度で選手に接しなければならなくなることではないかという声も少なくない。現在は子どもにレスリングを教えている元女子レスリングの選手は「優しすぎて、監督に向いていない」と吉田の心理面を心配している。
「世界一を目指そうという選手の指導は、限界を超える厳しさを本人が持てるように追い込まないとなりません。吉田さんの場合、自分を厳しく追い込むことはできるけれど、自分以外に厳しくすることができない。厳しくしようとしても、かわいそうになって最後でゆるめてしまう。子どもにレスリングを楽しく教えるのはすごく上手なんですが、トップ選手に厳しく指導するのは向いていないと思います。そして、そのことを自分でもよくわかっている。もし、断り切れなくなって監督をしなくてはならなくなったらと思うと、つらいですよね」
リオデジャネイロ五輪金メダリストの登坂絵莉(東新住建)、川井梨紗子(ジャパンビバレッジ)、土性沙羅(東新住建)らが現在も練習拠点としている至学館大学レスリング部には、次世代をになう有望選手たちも数多くいる。その新監督は7月中にも決まる見込みだ。「みんなの意識が高いから、強くなれる」と母校レスリング部への愛着をたびたび語っている吉田は果たして、どんな決断をすることになるだろうか。