ライフ

ビールの人気は本当に冷え続けているのか

消費者の好みも多様化している

 ビールがうまい季節である。一方で「ビール離れ」も盛んに報じられる。ビールを取り巻く環境はどうなっているのか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が指摘する。

 * * *
 先日、新聞で「ビール 冷え続ける人気」「今年上半期の出荷 最低更新」(7月12日朝日朝刊)という見出しの記事を見かけた。大手5社の発表によると上半期の出荷量が前年比でビールがマイナス6.3%、発泡酒がマイナス8.4%、第3のビールはプラスで1.9%増となり、全体では前年比マイナス3.6%の1億8338万ケースになったという。

 大手5社(キリン、アサヒ、サッポロ、サントリー、オリオン)全体としての出荷量が落ちていることはわかった。しかし大手メーカーのナショナルブランドの出荷量が落ちたからといって「ビール 冷え続ける人気」とかいうドヤ顔調の見出しを見るとそこはかとなく心がざわざわしてしまう。

 例えば2017年の「地ビールメーカー動向調査」(東京商工リサーチ)では、クラフトビールも7割以上のメーカーが前年より売上を伸ばしているという結果が出ているし、都内ではいま自家醸造ビールを飲ませる「マイクロブルワリー」が雨後のタケノコのような勢いで増えている。「ナショナルブランドにあらずんばビールにあらず」という時代はもう過去のものと言っていい。

 実はこの「大手ビール離れ」と「他飲料のシェア増大」や「クラフトビール好調」という流れは海外、特にアメリカのアルコール飲料市場の動きと酷似している。アメリカも近年までは「アルコールと言えばビール」「ビールと言えば大手」という風潮だったが、気鋭のワイナリーやクラフトビールを醸造するマイクロブリュワリーの躍進もあって、より多様なアルコール飲料が飲まれるようになった。

 昨今の日本におけるマイクロブリュワリー人気ももとをたどれば、アメリカから生まれたトレンドだ。1970年代、アメリカの一部家庭でビールの自家醸造「ホームブリュワリー」がブームとなった。そうした個人の愛好家が独自の味を追求。ファンを増やし、1980年代以降マイクロブリュワリーとして創業するケースが相次いだ。

 2008年以降にはビール醸造所の数は年間120%ペースで増え、ビール醸造所の数はこの10年足らずで6倍以上に。クラフトビールのシェアはアメリカのビール生産量の12.3%、売上額では21.9を担うまでになり、いまやアメリカにおける成長産業と言える位置づけになった。

 一方、日本では個人で楽しむ程度の量でも、酒造免許を持たない者がアルコールを醸造してはいけない。昨今では酒販店でずいぶんと多種多様なクラフトビールを手にとることができるようになったが、日本のマイクロブルワリーの数は2018年初頭現在で312。一方アメリカでは2016年時点で3132と10倍以上の醸造所が稼働している。

関連記事

トピックス

炊き出しボランティアのほとんどは、真面目な運営なのだが……(写真提供/イメージマート)
「昔はやんちゃだった」グループによる炊き出しボランティアに紛れ込む”不届きな輩たち” 一部で強引な資金調達を行う者や貧困ビジネスに誘うリクルーターも
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
藤浪晋太郎(左)に目をつけたのはDeNAの南場智子球団オーナー(時事通信フォト)
《藤浪晋太郎の“復活計画”が進行中》獲得決めたDeNAの南場智子球団オーナーの“勝算” DeNAのトレーニング施設『DOCK』で「科学的に再生させる方針」
週刊ポスト
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
「漫才&コント 二刀流No.1決定戦」と題したお笑い賞レース『ダブルインパクト』(番組公式HPより)
夏のお笑い賞レースがついに開催!漫才・コントの二刀流『ダブルインパクト』への期待と不安、“漫才とコントの境界線問題”は?
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン
韓国・李在明大統領の黒い交際疑惑(時事通信フォト)
「市長の執務室で机に土足の足を乗せてふんぞり返る男性と…」韓国・李在明大統領“マフィアと交際”疑惑のツーショットが拡散 蜜月を示す複数の情報も
週刊ポスト
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
高校時代にレイプ被害で自主退学に追い込まれ…過去の交際男性から「顔は好きじゃない」中核派“謎の美女”が明かす人生の転換点
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《死刑執行》座間9人殺害の白石死刑囚が語っていた「殺害せずに解放した女性」のこと 判断基準にしていたのは「金を得るための恐怖のフローチャート」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《小室圭さんの赤ちゃん片手抱っこが話題》眞子さんとの第1子は“生後3か月未満”か 生育環境で身についたイクメンの極意「できるほうがやればいい」
NEWSポストセブン
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
【独占インタビュー】お嬢様学校出身、同性愛、整形400万円…過激デモに出没する中核派“謎の美女”ニノミヤさん(21)が明かす半生「若い女性を虐げる社会を変えるには政治しかない」
NEWSポストセブン