さらに言えば、ユニクロの売れ残り商品は最終的にはかなり底値まで値下げされます。だいたい790円~1990円くらいです。こうなると、ジーユーの定価と同じなのでわざわざジーユーを買う理由はなくなります。
これは「オールドネイビー」が日本から撤退した理由と同じです。オールドネイビーは「GAP」の廉価版ですが、日本のGAPは定価設定を高くしておいて最終的には大幅値下げで投げ売ることを上陸以来続けてきました。
これによって日本人の頭の中には「GAPはタダみたいな値段まで下がる」と刷り込まれていますから、わざわざGAPの廉価版の粗悪品を買う必要がなかったのです。GAPの価格戦略のミスといえ、スタート当初のジーユーも同じミスを犯していたのです。
鳴かず飛ばずのジーユーが転機を迎えたのは、2009年3月に発売した「990円ジーンズ」でした。
2008年に発生したリーマンショックの不況も手伝って、1000円未満という超低価格ジーンズの発売がメディアに積極的に取り上げられ、競合他社は色めき立って積極的に後追いをしました。低価格品を作ることはプロモーションにもつながるということの好例だといえるでしょう。
しかし、この商品は他社もジーユーも長続きしませんでした。現在のジーユーの店頭には値下げされて990円になったジーンズはあっても定価990円ジーンズはありませんし、当時追随した競合他社のイオンもイトーヨーカドーも現在は1000円未満のジーンズはほとんど展開していません。結局は1000円以下のジーンズは単なる粗悪品に過ぎず、日本人消費者は1度か2度買っただけでリピーターにはならなかったのです。
次の転機が2010年の「高トレンドブランドへの転身」です。990円ジーンズで一躍知名度を上げたジーユーは、それまでの「廉価版ユニクロ」から脱却し、トレンド対応型のブランドへと転身しました。ジーユーの柚木治社長はインタビューで、〈トレンド対応への転身は最後の賭けだった。これに失敗したらブランドはなくなっていた〉と語っていましたが、その賭けが当たったのです。
2010年当時は、リーマンショックの影響が色濃く残り景気は悪かったうえに、「H&M」や「フォーエバー21」など、前年や前前年に日本に上陸した外資ファストファッションブームが起きていました。低価格・高トレンドを売り物とする外資ブランドが受けていたのです。そしてジーユーの転身はこの当時の風潮に見事に適合したといえ、ここからジーユーの急成長が始まったのです。
転身後のジーユーはあっさりと売上高500億円の壁を突破してしまいます。2012年度は562億円の売上高に到達します。毎年着実に売上高を伸ばし、2013年度は837億円、2014年度は1075億円となり、2018年8月期では2000億円を越える見通しとなっています。2010年までの低成長が嘘のようです。