ライフ

宗教学者・山折哲雄が選ぶ「日本人の死生観を考える7作」

宗教学者の山折哲雄氏(写真:五十嵐美弥)

 日本人は、「死生観」という独特な概念を育んできた。歴史上有名な書の中にも、それを考えさせられる作品が数多くある。宗教学者・山折哲雄氏が「読まないと後悔する本」として挙げる、死生観を考える7作品とは──。

 * * *
 まず「死生観」というコトバに注意してほしい。これは幾世紀もの歳月をこえて日本人に好まれ愛されてきたコトバだ。それに、生と死がひとつながりになっている。表裏一体になっている。こんな表現は英語などの西欧語にはみられない。そこでは生と死は分離し断絶していて、ひとつづきにはならない。それが近代の現代語にも受け継がれ、たとえば死の定義についても心臓死とか脳死とかいう。ここでは死が生と切り離されて点でとらえられている。

 けれども古くわが国の『万葉集』【1】では、人の死は「もがり」という生から死にいたるプロセスの中でうたわれ、意識されていた。「もがり」とは、生理的には死の兆候を示していても、魂はまだのこっていて、もとの肉体にもどってくる可能性があるという考え方だった。社会的にはまだ生きているというもので、生から死へのプロセスに重きを置く人生観だった。そこから生とは死を受け入れること、つまり死を覚悟する人生といった観念が生みだされることにもなった。

 面白いことに古代的な「もがり」の期間には、死にゆく人の身分や状況に応じて違いがあったということだ。庶民の場合は三日とか五日、貴人とか武士の場合は一週間とか一〇日、さらに天皇の場合は一年あるいはそれ以上と、大きな幅があった。後継者の有無、権力移譲の争いなどがからまり、それが落ちつくまでは死者をまだ生きている存在とみなして、死の社会的告知をひかえるという慣習がのちのちまで生きのこった。

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン