そもそも移民推進派が論拠とする「人口減による労働力不足」は本当なのだろうか。確かに、少子高齢化で2030年の生産年齢人口は2015年比で約853万人も減少するとされる。
だが心配はいらない。2015年に野村総研が公表したレポートによると2025~2035年頃に単純労働や事務職を中心に日本の職業の約49%がAIやロボットで代替可能になる。自動運転の普及で運転手は職を失い、工場のオペレーターや銀行員なども不要になるはずだ。
約半分の仕事で人間が不要になれば、労働力が不足するはずがない。政府がなすべきことは移民推進ではない。むしろ、コンピューターや機械に代替されないクリエイティブな人材の育成に尽力すべきである。
目先の人手不足に苦しむ経済界の求めに応じ、事実上の移民受け入れを決定した政府の罪は重い。
【プロフィール】もりなが・たくろう/1957年東京都生まれ。東京大学経済学部卒。日本専売公社勤務時代に経済企画庁に出向。UFJ総合研究所などを経て、現在、獨協大学教授。著書に『森卓77言──超格差社会を生き抜くための経済の見方』(プレジデント社刊)などがある。
※SAPIO 2018年7・8月号