◆そんな自分も更年期 大汗と疲労感に泣く

 引っ越し当日、新居行きの箱が運び出されるところを眺めながら、最後を任せた廃品業者と打ち合せしたときのことを思い出した。担当の女性が、「片づけていてつらくなったら無理しないで。物は物。代わりはあるって割り切ることも大事なんですよ」と言ってくれた。きっと多くの娘世代が苦悶の表情で片づける姿を見て来たのだろう。

 新居は何もかも真新しく気持ちよい部屋。家具も計算通りに収まった。嬉々として衣類などをしまい始めた母を見てホッとする一方で、私の気持ちはそう軽くはなかった。

「やってしまった…」

 その日は2人で外食し、居室内のユニットバスで母が初入浴をし、パジャマに着替えるのを見届けてから部屋を出た。建物を出ると、夜9時を過ぎているのにまだ暑かった。

 あっと思うと、また全身から大量の汗。鼻先から滴るほどだった。そしてもう1歩も足が前に出ない。こんな疲労感は初めてだった。幸い目の前は大きな道路で、流していたタクシーに倒れ込むように乗ると、冷房の効いた車内が天国のようだった。

 母は新生活を気に入り、認知症の症状もずいぶん改善した。私の苦悶の日々も、懐かしい思い出になりつつある。

※女性セブン2018年8月9日号

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