ライフ

あさのあつこ氏「ツレうつ」著者の落語コミックエッセイで目鱗

『お多福来い来い』第3回「唐茄子屋政談」より

『ツレがうつになりまして。』の著作で知られる漫画家・細川貂々(てんてん)さんが落語をテーマにしたコミックエッセイ集『お多福来い来い』(小学館刊、1296円)を刊行。発売早々話題を呼んでいる。本書の魅力とはどんなものだろうか? 大ベストセラー「バッテリー」などの著者・作家のあさのあつこさんに、聞いた──。

 貂々さんの作品はこれまでも読んできましたが、その魅力は、自分を隠さないこと。しかもそれは「さあ、見て見て」というものではなく、ここまでさらけ出さないと私は描けないんです、というギリギリのところをとても感じます。読者に対して誠実で、真っ当で、変に飾り立てるところもない。

 貂々さんが抱える生きづらさとそれを克服していく強靭さは、どの作品にも通底していますが、特にこの作品にはとても感じました。それは落語の持つ強さ、例えば貧乏や病、人間関係でも、どんな困難でも笑って乗り越えていけるという落語の真髄が、貂々さんの作品に繋がっているからだと思います。

 この作品の中で、落語との出会いは、落語好きの釈徹宗先生と知り合って、とありましたが、私は落語と出会うべくして出会ったのではないかと思うんです。きっと釈先生と出会っていなくても、クリエーターとして、どこかで落語に触れたのではないか、と思いましたし、運よく落語が転がり込んできたのではなくて、貂々さんがずっと考えてきたこと、生きてきたことに、落語が引き寄せられたという気がしました。

 私自身は落語をあまり知らなかったのですが、落語によって人がこんなに支えられたりするんだ、人の生活と結び付くんだと、とても新鮮で、目からウロコが落ちました。

『唐茄子屋政談』の回で、ツレさんは「これはボクの物語なんだよ」と話すシーンがありますが、きっと読者は「『死神』は私の物語だ」「『替わり目』は私の物語だ」と、一人一人違う演目で感じるのではないでしょうか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン