──処女の方の利用も少なくないようですね。処女の人は3割くらい、と答えているホストがいます。
中塩:二極化していると感じます。性に奔放な人は奔放で、していない人はしていない。これは男性も同じかもしれません。
◆大手企業を辞め、46歳でデビューしたニューハーフヘルス嬢も
──本書では、女性を顧客とする「男性ホスト」のほかに、「ウリセンボーイ」と「ニューハーフヘルス嬢」を取り上げています。彼(彼女)ら自身のセクシュアリティと同時に、彼らのお客さんとなる方々のセクシュアリティも多様です。
中塩:セクシュアリティは多様。ですから、受け皿もまた多様になるのだと思います。
──印象的なのは、大手企業を辞め、46歳でデビューしたニューハーフヘルス嬢です。
中塩:彼女は早い段階で男性性への違和感を覚えていたものの、女性として生きるための準備を周到にしていたんですね。男性として大手企業で働き、貯金をし、しかるべきタイミングで会社にカミングアウトし、46歳で風俗デビューした。準備期間は長かったのですが、彼女の生き方は、若いトランスジェンダーにとって、こういう人生もあるんだという一つの良いモデルになると思います。若くして性別適合手術を受け、後悔している人も、多くはありませんがいるので。
──「トランスジェンダー活動家」として活動するなど、社会的活動や発言を積極的にされているニューハーフの方が多いという印象を受けました。
中塩:トランスジェンダーは社会の壁にぶつかることが多く、そのたびに格闘して、乗り越えてきています。なるべく静かに暮らしたいというタイプの方ももちろんいるのですが、取材をさせてくださいとお願いすると、これまで考えてきたことを話してくださる方も少なくありません。
ニューハーフヘルス嬢に限らず、セックスワーカーに取材依頼をすると、喋りたいという方はけっこういます。今回の本では彼らのライフヒストリーをできるだけていねいに書きましたが、母子家庭で育つなど幼少期の苦労や、仕事の苦労を、伝える機会がなかなかないので、みなさん話してくださるんですね。この本でそれらを少しでも伝えられていればと思っています。