マンションの居住者たちが良好なコミュニティを形成するに越したことはない。しかし、それは必ずしも必要かというと、そうでもない。
管理組合がしっかり機能していれば、マンションの区分所有者や居住者のコミュニティが和気あいあいとしていようが、多少ギスギスしていようが、日常生活に大きな影響はないはずだ。
分譲マンションの管理組合の場合、もっとも注意すべきは管理組合の運営を私利私欲に任せないことである。マンション管理というのは、ある程度のまとまったお金が動く利権だということを忘れてはならない。
例えば、200戸規模のマンションなら、区分所有者から年間に徴収される管理費や修繕積立金の総額は1億円前後になる。600戸なら3億円規模だ。このお金をどう使うかは、事実上理事長の意志にかかっている、といっても過言ではない。
現在の区分所有法では、理事長が悪意をもって組合の財産を蝕んだとしても、それを暴いたり監査する手段はほとんどない。だから、管理組合の理事長が何億円もの組合のお金を横領する事件が報道されている。それも多分、氷山の一角だろう。多くの管理組合は、自分たちのマンションの資産価値を守るために、不祥事を表沙汰にしたがらない。
管理組合の運営は、往々にして私物化されるケースが多い。多くの区分所有者が気づかない内に、理事長や特定の理事などに組合の資金が還流する仕組みが作られているのだ。組合のコミュニティ形成のために開催されるイベントなどは、こういった背後のどす黒い資金還流の隠れ蓑になっているケースも多い。
・同じ人物が何年も理事長を務めている。あるいはフィクサー的な人物が理事会にいる
・管理会社を変更する動きがまったく見られない。あるいはその動きが出ると潰される
・理事への報酬などが、いつの間にか高額になっている
・理事の飲み会が多く、管理費からその費用が支出されている
・管理組合の親睦イベントが多いが、参加者は常に同じ顔ぶれ
・理事会のメンバーが妙に狎れあっている
管理組合は「仲良し学級会」ではない。巨額の予算を執行する利権を有している。その運営は、和気あいあいというよりも、一定の緊張感が必要だ。また、カラオケやゴルフなどのイベントは、同好の人々が集まって個人の費用負担で行うべきもので、共用部分の維持管理のために徴収される管理費から流用すべきではない。
マンションのコミュニティ形成には、こういった原則を忘れてはならない。