「正直、私はときめかなかったけど……、彼が周囲に愛さているのがよくわかったし、やさしいし、こういう人と結婚するのもアリなのかなあとだんだん心が動きました。私は一人っ子なので、親を大事にしてくれそうというのも大きかった。なにより、先輩にフラられて弱っていた、というのがいちばんですね(笑)」
Mさんはミサさんにこう告白した。
「絶対に幸せにする、とはいえません。幸せは、ミサさんが感じることだから。でも僕は、できる限り苦労をかけないし、邪魔をしない。家事をするし、お金の苦労をさせない。僕は明るくパワフルなミサさんが大好きだから、ミサさんの好きなように生きてほしくて、それを応援したいんです」
決して大きなことを言わない。真面目で実直。ああ、ほんとうに、この人は結婚向きの男だな、という実感が、ミサさんの中に刻まれた。
■ジム通いで垢抜けていく夫、ゴルフで家をあける妻
結婚生活に大きな不満はなかったという。ただ、なかなか子供に恵まれなかった。35歳をすぎたころ、ミサさんは不妊治療をしようと夫に持ちかけたが、彼の答えは「僕は2人で十分幸せだよ」だった。それをミサさんは、愛されている証だと受け取った。
「私は仕事が好きなので、2人で楽しく生きていくのもいいかなと、次第に気持ちを切り替えるようになりました。不妊治療は大変だと聞くし、お金もかかるので……。で、子供を諦めるなら、もう少し自分たちにお金をかけようと、ジムや習い事に行くようになったんです」
人生最大体重を更新しつづけていたMさんは、ジム通いを始めた。ぽっちゃり体型からの脱却は容易ではなかったが、それでも徐々に、成果は表われた。これまでファッションに関心を示したことのなかったMさんだが、ミサさんとのショッピングを楽しむようにさえなった。
一方のミサさんは、結婚を機に遠ざかっていたゴルフに、再び精を出すようになった。
「で、土日のどちらか、私が家をあけるじゃないですか。たまに平日休んでゴルフに行く日もあったので、どうしてもすれ違いが増えていく。すると夫が淋しいって言うんですよ。じゃあ他に何が始めたらって勧めたら、株を始めたんです」