「70年前は、たしかに時計を1時間早めたぶんだけ、日が高い夕方に余暇時間ができました。でも結局は、多くの人が生活のリズムを崩すだけだった。私の周囲の人たちも、“いつもより早起きになる上に、夜もなかなか寝つけない”と睡眠不足に陥って、疲弊していたと記憶しています。
そもそも北海道から沖縄まで南北3000kmに伸びる日本は、地域によって日照時間が全く違う。法律で一律に夏時間を導入して何かの効果を期待するなどナンセンスで、混乱を招くだけだったのです」
戦後の混乱期だけの話ではない。近年になって地域限定で実施されたサマータイム制度でも、弊害が明らかになっている。
2003年夏、始業時間を繰り上げることでサマータイムの実証実験を行なった滋賀県庁では、職員を対象にしたアンケートで、41%が「労働時間が増えた」と回答(回答数1231人)。北海道内で札幌商工会議所が主体となって役所や企業が参加した実証実験でも、従業員の27%が「労働時間が増えた」と答え、22.6%が「体調が悪くなった」という(同1万780人)。
こうした経緯は、日本版サマータイムがいかに“悪手”であるかを物語る。
※週刊ポスト2018年8月31日号