そうした板井氏の告発を相撲協会は黙殺していたが、2010年に起きた大相撲野球賭博事件の捜査で、押収された携帯電話の記録から八百長が発覚。23人の力士が引退勧告や出場停止処分を受けた。そうした「角界浄化」に果たした板井氏の功績は極めて大きかった。
板井氏はかつて、本場所中に“怪しい一番”があると、記者に電話を掛けてきては「なんで得意の右四つを組み替えるかなぁ。俺が監察委員ならアウトだよ」などと笑っていた。ただ、稀勢の里が横綱に昇進して以降は「今日のあの一番は最高だったね」とガチンコ相撲の面白さを解説するようになっていた。
若い頃から糖尿病を患い、心臓にはペースメーカーも入っていた。体調が優れなかったはずの最近も、板井氏は角界の未来を憂う言葉を口にしていた。
「今の力士はサラリーマンみたいに見える。もっと豪快な奴が出てきてもいいんだけどね。これも時代かね」
現役力士や親方、協会幹部は、板井氏の訃報をどう聞いたのか。
※週刊ポスト2018年8月31日号