《パン一枚を二分し、マーガリンをぬってチーズをはさむ。副食用の弁当箱には人参おろし、かぼちゃの煮付、煮豆、缶詰サバ水煮一切、ギンダラ煮付一切、あおい野菜のてんぷら。それに牛乳一本。魚は一切というより一口。野菜は日によって変えるそうです。なお、先生は大豆の効果を確信されていて「豆乳」が手に入る場合は、何をおいても豆乳を食卓においていました。(中略)研究室の引き出しにはトロロ昆布の吸物の材料が常備されていて、楽しそうにお椀をつくられます。旅行先や、車中でも、この海藻の吸物と、人参おろしは必ず手製します。だから旅先のカバンや、調査のときのリュックには必ずおろし金や食材料がおさまっていました》
各地で見聞した知恵を近藤博士自ら生かしている様子がうかがえる。
近藤博士は1977年1月22日に84才で逝去。日本医師会から賞を受けてから2か月後のことだった。もちろん、当時の人にしてはかなりの長寿だった。
同書の最後に残した言葉が印象的だ。
《私の研究はすべて理屈は抜きにして、もっぱら実際たしかめて知り得た体験ばかりです。どうか、ひろく役立てて、元気に長寿を得られるように願ってやみません》
博士が人生を賭して導き出した長寿の法則。生かさない手はない。
※女性セブン2018年8月23・30日号