お笑い芸人と喜劇役者の違いについても解説してもらった。

「お笑いの人には喜劇はできないんじゃないかな。喜劇はあくまで劇としての笑いだから。

 たとえば、喜劇とコントって似ていると思うでしょ。でも、決定的に違うのはコントは『やってみせ芝居』なんだ。『誰それという芸人がコントをやってますよ』というのを分かった上でやる。『加藤茶がお爺ちゃんをやってますよ』とかね、この場合、舞台に出ているのはその役ではなくて加藤茶なんだ。だからわざとらしくおふざけのカツラをかぶってもいい。加藤茶のおふざけをみんな見ているんだから。

 でも、喜劇はそうじゃない。あくまで芝居だから、カツラを被っているとお客に思われたらダメなんだ。本物のカツラだったり、頭を剃ってちゃんと『その役』になっていないと。つまり、コントはやってみせる芝居で、喜劇は役そのものになっている芝居。決定的に違うんだよ」

 喜劇のできる客観性はいかにして身に付くのだろうか。

「最初はみんな主観から入っていくんですよ。それで修業していろんな段階を通って上に行く。

 世阿弥の言葉で言えば『離見の見』です。主観から離れている目を持ちなさい、ということ。

 芸事って上へ行くほど、ただ汗をかくだけじゃダメなんだ。『なりきり演技』とか『神がかり演技』とか、あんな傍迷惑なものはない。手に負えない。レベルの低い人ほどなり切ろうとする。そのことだけに一生懸命で、それに慣れるとそこで固まっちゃう。熱心さはいいんだけど、そこで終わっちゃうんだ。客観まで突き抜けないと」

●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。

■撮影/横田紋子

※週刊ポスト2018年8月31日号

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