顔認証で市民は常に当局の監視・管理下にある(北京) The New York Times/Redux/AFLO
しかし、その後、中国の通信機器メーカー・ファーウェイ(華為技術)や台湾のEMS(電子機器受託生産)企業・鴻海精密工業傘下のフォックスコン(鴻海科技/富士康科技)などが進出し、1990年代後半から急成長した。それに伴い深センもIT関連の起業やインキュベーション(事業の創出や創業を支援するサービスや活動のこと)の拠点として労働集約型産業から知識集約型産業に進化し、世界有数の最先端IT都市へと大変貌を遂げたのである。
これほど深センが飛躍した原動力の一つは“中国版ナスダック”や“チャイネクスト”と呼ばれる深セン証券取引所のベンチャー企業向け市場「創業板」だ。これを上海ではなく深センに置いたことで、ベンチャーキャピタルが深センに根付いたのである。
今や深センでは1兆円を超えるベンチャーキャピタルがいくつも生まれ、1週間で500以上の起業案件を処理しているとも言われる。実際、2016年の新規企業登録数は中国トップの約38万7000社に達し、深セン証券取引所の2017年のIPO(新規公開株)数は222社で世界一だ。ちなみに日本の2016年の新規企業登録は約12万8000社、2017年のIPO数は86社。深センは都市なのに、新規企業登録数もIPO数も日本一国より、はるかに多いのである。
そういう環境の中で、ファーウェイやSNS中国最大手のテンセント、民間金融の中国平安保険、ドローン世界最大手のDJI、通信設備・通信端末メーカーのZTEといった深センに本社を置く企業が急成長し、ユニコーン企業(評価額が10億ドル以上で非上場のベンチャー企業)も14社を数える。その結果、すでに深センの1人あたりGDPは国内主要都市中トップになって台湾をも追い抜いている。コンテナ取扱量も上海、シンガポールに次いで世界第3位だ。