大前研一氏
また、今や本家シリコンバレーの研究開発は事実上、ほとんど深センでやらざるを得なくなっている。なぜなら、斬新なアイデアを考えついても、シリコンバレーにはそれを形にできる部品もスキルもないからだ。
◆“カエル跳び”で進化
かたや深センでは、世界最大の電気街「華強北」や部品業者が集積して電子部品のサプライチェーンを形成し、あらゆる電子部品を調達して試作品を半日で作ることができる。だから、パソコン、スマートフォン、ドローン、ロボット、拡張現実(AR)・仮想現実(VR)・複合現実(MR)などの分野で新しいものを研究開発するとなったら、世界でも深センしかないという状況になっているのだ。
さらに深センでは、EV(電気自動車)のバスやタクシーの導入、自動運転バスの実験、AIを活用した信号制御・交通整理、大学試験会場での顔認証、無人スーパー・無人コンビニ・無人カラオケ・無人フィットネスクラブといった社会実験・社会実装を積極的に展開し、都市全体がリープフロッグ(カエル跳び)で進化している。
北京の中関村は、もともと秋葉原のような電子製品街としても有名だったが、中国最大のIT企業・連想集団(レノボ)をはじめ多数のIT産業や研究所が集積し、北京大学や清華大学との合弁企業や合作企業が何百社もある。
杭州はeコマース中国最大手アリババの本社所在地で、同社出身の起業家が多い。これまで中国はシリコンバレーで生まれた新技術をパクっていたが、もはやそういう時代ではなくなり、シリコンバレーから中国に来て研究開発を一緒にやっていくというパターンが主流になっている。