数ある日本酒の中から獺祭を選んで飲んでくださるかたがたに、満足いく商品を届けたい。厳しい状況にあっても、酒の造り手としての矜恃を失ってはいけない。そうした思いが勝った。
とはいえ、このままでは会社として巨額の損失になる。なかなか進展しない事態に、焦りの気持ちばかりが加速した。そこへ、またも救いの手が差し伸べられる。
岩国市出身で旭酒造と交流のあった漫画家の弘兼憲史さんが、「さまざまな困難を乗り越えてきた“島耕作”の名前を使ってください」と申し出てくれたのだ。そこで通常の獺祭として販売しない分を『獺祭 島耕作』として販売することが急きょ決まった。
銘酒復活への歯車は、少しずつ確実に回り始めた。泥水を東川に吐き出すポンプを手分けして少しずつ分解して洗い、7月末に工場の機能が復活するまでにこぎつけた。9月には生産サイクルも元通りになった。
現時点で復旧が遅れているのは「獺祭ストア」だ。
「店内にあった1200~1300本の獺祭はすべて流出し、直売所の被害額は1億円ほど。直売所に行くために渡る橋などは、まだ壊れたまま。店の工事も遅れていて直売所の復旧は9月半ばになりそうで、現在は仮店舗で営業中です。最終的な被害額は15億円ほどになりそうです」(博志会長)
※女性セブン2018年9月27日号