国内

“死者”を“人々”と表現された皇后陛下の遺族へのお気持ち

今年6月、福島での全国植樹祭にて 共同通信社

 被災者を見舞う時も、戦没者を慰霊する旅でも、今上陛下の傍らには常に美智子皇后がいる。折々に発せられた、そのお言葉の意味を皇室ジャーナリストの山下晋司氏が読み解く。

 * * *
《この世に悲しみを負って生きている人がどれ程多く、その人たちにとり、死者は別れた後も長く共に生きる人々であることを、改めて深く考えさせられた1年でした》(平成27年お誕生日)

 皇后陛下が81歳のお誕生日を迎えられたときに国民に向けられた、このお言葉はいまでも心に残っています。戦後70年にあたるこの年、皇后陛下は天皇陛下と共にパラオ・ペリリュー島を戦没者慰霊のために訪問されました。同年に起きた茨城県常総市の豪雨災害や、発生から4年経った東日本大震災にも触れつつ、戦争や災害の犠牲者及びその遺族を念頭に、こう語られたのです。

 一般に人が亡くなると、遺族へのお悔やみは「故人は天国から見守られていることでしょう」などと励ます言葉を使うものです。

 ところが皇后陛下は“死者”を“人々”と表現された。魂でも御霊でもなく、心の中に生きている人々。確かに、悲しみを背負う遺族の心の中では、死者は共に歩む人々のように感じます。死者は過去ではなく、一緒に生きる存在なのだ──皇后陛下ご自身も、そんな遺族の気持ちに寄り添いたい、という意味を込められたのではないでしょうか。

 このお言葉には、慈しみとともに文学的表現の世界を感じました。まさに究極の慰霊の気持ちを表されたと思います。

【PROFILE】やました・しんじ●1956年大阪府生まれ。関西大学卒業。23年間の宮内庁勤務の後、皇室ジャーナリストとして『皇室手帖』の編集長などを務める。BSジャパン『皇室の窓スペシャル』の監修を担当。著書に『いま知っておきたい天皇と皇室』(河出書房新社)、監修書に『美智子さま100の言葉』『美智子さま 永遠に語り継ぎたい慈愛の言葉』(宝島社)など。

●取材・構成/祓川学

※SAPIO2018年9・10月号

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン