【銭湯】
銭湯の湯船は関東では奥に、関西では中央にあることが多い。大工などの職人が多かった関東では体の泥や汗を流してから入るので奥に、商人が多かった関西ではまず湯船で温まりながら商売の話をし、それから体を洗ったため中央になったとされる。富士山のペンキ絵も、関東の銭湯に見られる特徴だ。
【つり革】
電車の「つり革」の形は、関東では三角が多く、関西では丸が多いという傾向がある。線路に対して垂直に取り付けられる三角型は、つり革同士がぶつかりにくくたくさん付けられる。一方、線路に平行に取り付ける丸型は、とっさに掴みやすく個数も少なく済む。関西よりも関東の電車が混雑するため、このような違いが生まれたのだろう。
【いなり寿司】
いなり寿司の形は、関東では俵型であるのに対して関西では三角形である。関東の俵型は五穀を司る稲荷神社に奉納する米俵の形にちなむ。一方関西は、いなり寿司を好物とする狐の耳の形や、伏見稲荷大社のある稲荷山の形を模しているとされている。なお、関東では中のご飯が酢飯なのに対して、関西ではかやくご飯という違いもある。
●おかべたかし/1972年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒。出版社勤務後、ライター・編集者として活動。著書に『くらべる世界』『くらべる時代 昭和と平成』『くらべる東西』『くらべる日本 東西南北』(いずれも東京書籍刊)などがある。
※SAPIO2018年9・10月号