「吹奏楽の顧問は音楽科と思われるかもしれませんが、ほかの教科を教えている先生がたくさんいます。市立船橋の高橋健一先生もそうですね。吹奏楽経験がないのに、吹奏楽に魅了されて指導者になられた。プロの指揮者に弟子入りまでして、顧問5年目には全国大会金賞にまで導きました」
では、吹奏楽の魅力とはなんだろうか。オザワ部長は「管楽器が主体だからだと思います」と断言した。
「演奏者の吐く息がそのまま音になるのが管楽器です。人間にとって息は命と同じ。命がそのまま音になって届けられるのが吹奏楽。奏者の感情や心がより伝わる演奏形態だと思います。特に、高校生たちの演奏は若い命の力が音楽に乗って、聴く者の心を震わせるのです」
楽しさ、面白さ、仲間との共感、葛藤も悔しさも、彼らの想いすべてが演奏の中に溶けだし、格別な感動があるという。それが高校生活における吹奏楽の醍醐味とも言えるだろう。
オザワ部長は吹奏楽部への取材を通して、「部活動は教育の一環である」ことを日々肌で感じているという。
「全日本吹奏楽コンクールなどの目標はあるにせよ、全国レベルの学校では結果がすべてだと思っているところはほとんどありません。『その過程に価値がある』との考えは、どの学校も共通していること。たとえ結果がついてこなくても、全国大会に出場できなくても、肝心なのは生徒たちの学びと成長。部活動を通してそれを教えることが教育であると、多くの先生は考えていると思います」
【プロフィール】
なかい・ゆりこ/1977年兵庫県出身。8月に上梓した『20歳のソウル』が話題を呼ぶ。劇作家・演出家・演技指導講師。1996年、神戸で旗揚げされたガールズ劇団・TAKE IT EASY!に座付き作家として入団。2005年に活動拠点を関西から東京へと移す。2010年、劇団中井組の座付き作家・演出家に就任し、2013年まで活動。2018年2月にmosaiqueを結成。
おざわぶちょう/日本でただひとりの吹奏楽作家。1969年生まれ。神奈川県横須賀市出身。県立横須賀高校を経て、早稲田大学第一文学部文芸専修卒。在学中は芥川賞作家・三田誠広に師事。『一球入魂! 一音入魂! 甲子園に響け!熱援ブラバン・ダイアリー』(学研プラス)など著書多数。吹奏楽CDのプロデュース・ライナーノーツ執筆、司会、講演など幅広く活動している。Twitterアカウントは@SuisouAruaru