片山:2度の淘汰と粛清を経て、おかしな人だけ残ってしまった。そう考えると連続する官僚のスキャンダルも納得できる。ところで政権交代による官僚の腐敗や弱体化と反比例するように力を持った組織があります。内閣府です。
佐藤:内閣府は、2001年に縦割りの各官庁の上に置かれました。つまり特定の誰かの権益を守るのではなく、全体を代表する組織です。でも実際の社会同様に各省庁間にも利害対立がある。全体を代表するということは、無代表と言ってもいい。
片山:そこが大きな問題ですね。内閣府に、省庁同士の利害関係の調整や、官邸主導の決断を期待している人もいるのでしょうが、メリットよりもデメリットが大きい。内閣府が力を持つと、権力者の都合ですべて決められてしまう。
佐藤:しかも権力に近い人たちだけが集うブラックボックスですからね。
【PROFILE】かたやま・もりひで/1963年生まれ。慶應大学法学部教授。思想史研究者。慶應大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。『未完のファシズム』で司馬遼太郎賞受賞。近著に『「五箇条の誓文」で解く日本史』。
【PROFILE】さとう・まさる/1960年生まれ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。主な著書に『国家の罠』『自壊する帝国』など。片山杜秀氏との本誌対談をまとめた『平成史』が発売中。
※SAPIO2018年9・10月号