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「ママの応援団になる」闘病母のためにがんの自由研究した少女

夏休みの1か月を費やして書き上げた自由研究は計30ページの力作!

 東海地方に住む主婦の由紀さん(43才)は、3年前にがんを発病し、現在も抗がん剤投与などを受けて闘病中だ。昨年の夏、由紀さんは一人娘のさやかちゃん(12才)に、病名を告げる気持ちを固めた。

「夏休みに入ってすぐ、昼間、娘とふたりでいる時を選んで、がんであることを伝えました。『今まで話さなくてごめんね。これからは何でも話すから、何か聞きたいことがあったら何でも聞いてね』って。そうしたら、『ふ~ん、ママ、がんだったんだ』という感じで拍子抜けするというか、『あっ、そう』みたいな反応だったんです」(由紀さん)

 それからしばらく無言だったさやかちゃんは、おもむろに黙々と絵を描き始めた。そして、ペンを走らせながらこう言った。

「ママの応援団になる」

◆さやかちゃんの葛藤──大好きなママのことだから包み隠さずに教えてほしい

 思っていたより落ち着いている…。意外にも冷静だった娘の反応に、由紀さんはホッと胸をなで下ろした。

 と、さやかちゃんが質問をいきなり投げてきた。

「ねぇ、この話ってママと私だけの秘密なの?」
「違うよ」
「パパは知ってる?」
「当たり前じゃん。パパは知ってるに決まってるでしょ」
「じゃあ、バァバやジィジは知ってる?」
「知ってるよ」
「エ~ッ! 知らなかったの私だけ? なんで私だけ教えてくれなかったのー!」

 突然、怒りの気持ちを露わにしたさやかちゃんに、由紀さんは戸惑う。その場はなんとなくやり過ごしたものの、心の中に不安が芽生え始めた。

「パパやバァバたちのことを気にするなんて、なんだか子供らしいなと思って思わずほほえんでいたら、急に雰囲気が変わっちゃって…。きっと、自分だけ仲間外れにされた気がしてショックを受けたんだと思います」(由紀さん)

 さやかちゃんの気持ちは穏やかではなかった。水面に投じられた小石から波紋がだんだん広がっていくように、どこか納得いかない気持ちが、不満、不服となって表れた。

 夜、風呂上がりに地団太を踏みながら憤りを爆発させたり、寝ついたかと思ったらいきなり身を起こして怒りを訴えたり…由紀さんはそのたびに、「ごめんね。今度からちゃんと話すからね」と言って、娘を抱きしめた。その時の気持ちをさやかちゃんはこう語る。

「やっぱり、家族だからいちばん最初に教えてほしかった。私も一緒にママのがんを応援していきたいって思ったから」

 大好きな母親のことだから、包み隠さずに教えてほしかった。そうすれば、どんな病気が相手でも、一緒に助け合えるから…娘はそう思っていたから悔しさを隠しきれなかった。そのことに気づいた由紀さんは、思いを改めるとともに、感謝の念を抱いた。

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