人間の厚みと複雑さ、哀しみ、ペーソスが滲み出す横顔。張り詰めた空気を柔らかくしてくれる人。受け止めてくれる男。そう、病の進行で不安にかられる尚にとって、暖かな体温を感じ、「ぎゅっと抱きしめたいテディベア」的存在です。
真司はシリアスな役どころではあっても、クソ真面目ではなく、ふとふざけたりじゃれたりするから余計に暖かみがある。そのあたりをムロさんが絶妙に演じています。
元小説家・間宮真司の人物設定は、「深い孤独と特殊な育ちからくる独特な感性で、自らの不幸を自ら救うように小説を書きはじめる」(番組公式ページ)。それが奇しくもムロさん自身の生い立ちとかぶる点も複雑な味わいを醸し出しています。
幼い頃に両親が離婚し子供の時から養育者が次々に変わっていった、という複雑な生い立ちのムロさん。絶えず人を笑わせないといけないという感覚も、数奇なその人生から身についたのだとか。親戚等の家で暮らす子としては、「嫌われたら生きる場所がなくなってしまうという防衛本能だったんです。それに家庭内で不幸じゃないってことをアピールしなきゃいけなかった」とインタビューで振り返っています。
もし、ふざけることが習性となっていたのだとすれば……これまでのコメディアン的振る舞いは、どこか過去にとらわれていた姿。しかし今回、おふざけに走らずブレーキを踏んだことによって、いよいよ「役者としてのムロツヨシ」が立ち現れたのかもしれません。真司役でムロさんは新境地を拓いた、と言えるのではないでしょうか?
今回のドラマはその構造自体、成功パターンを踏んでいそうです。まっすぐに生きる女と、ふわりと優しく受け止める男──これって、中年女性が大好きな恋愛ドラマのパターンですから。『冬のソナタ』のヨン様を見ればわかるように。
いよいよ後半へ突入した『大恋愛』。どこまで大化けするのか、目が離せません。