芸能

ムロツヨシ『大恋愛』で拓く新境地 ヨン様を彷彿させる演技

今回はシリアスな演技が光るムロツヨシ

 恋愛ドラマが充実している今クール、ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が注目するのが金曜22時枠だ。実は同作品、“ヒットの法則”も見てとれるという。

 * * * 
 秋ドラマの中で、どこまで化けるかわからない潜在的エネルギーを感じさせる作品が『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS系金曜22時)。何と、見逃し配信の再生回数が「歴代最高」を記録した、というのですから。

 その物語はーー若年性アルツハイマーになった女医の尚・戸田恵梨香と、引っ越しのアルバイトをしている元小説家の真司・ムロツヨシ。偶然出会った2人は生活環境の違いを乗り越えて、大恋愛へ。

 医師との婚約を解消し、真司の部屋で同棲を始めた尚。この恋愛は成就したかに見えた。しかし記憶は次第に薄れていく。厳しい現実をどう直視し受け止め、それでも愛し続けるのか。愛しい相手にとって「本当の幸せ」とは何なのか。自分との関係を続けていくことは、「本当の幸せ」なのか? 2人は自問自答を繰り返し……。

「若年性アルツハイマーと恋愛」という物語の設定は、すでにどこかで見たようなパターンではあります。しかし、演じている役者2人がキラキラと輝いて新鮮で、物語の既視感を打ち破っていく勢いがある。その点こそ、ドラマの見所でしょう。

 とにかく、尚を演じる戸田恵梨香さんがノっている。みずみずしくて自然体でハマリ役の勢い。竹を割ったようなすっきりとした性格も、ピタリ戸田さんにあっています。背筋をまっすぐに伸ばし、いつも前を向いて走っていく。男になよなよと頼るようなタイプではない女。その「強さ」が、しかし病の影響で「弱さ」にからめとられていく過程が切なく浮かび上がってくる。

 中でも、尚と真司がじゃれあう子犬のように連続キスする場面は今後も語り継がれるであろう、名シーンと言ってもよいのではないでしょうか? 相手のことをものすごく「好き」だという感覚を、2人の役者が瞬間のうちに全身で表現していました。だからこそ、後日の「別れよう」という一言はあまりに衝撃的。真司が尚の将来をとことん考えた結果だとしても……。

 そう、尚の存在以上に魅力的なのが、ムロツヨシさん演じる真司です。ムロさんといえば、これまでは「おふざけ」「喜劇」のイメージ一色。ぼさぼさ頭、まん丸い目にほくろ。身長168 cm、ころっとした体つきもまたコメディアン向き。だから、「笑わせることが彼の持ち味」だと、多くの人は思わされて(錯覚させられて?)きたのです。

 しかし、実はそうではなかった。シリアスな演技がこれほど光るとは……。

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン