「芸能界は選ばれたごく少人数が活躍する別世界という印象で見られているなかに、隣のお姉さんのような、手を伸ばせば届きそうな身近な女子大生が登場してきた。今でいうAKB48のような存在のハシリだったのかもしれませんね。
女性が大学に行くのが当たり前の時代になってきたということも、女子大生をより身近に感じられた理由の一つだと思います。大学に通っている基盤があり、普通の生活をしながら芸能活動をやっているという素人っぽさが魅力だったのではないでしょうか」
大学生というブランドは今後も武器になり得ると語る。
「大学を1つのブランドと考え、大学名を明かして仕事をしている人が最近は多いですよね。例えばクイズ番組とか。歌が上手い人、綺麗な人、可愛い人はたくさんいます。そこに加えるプラスアルファの要素として大学は一つの武器になっています」
自身の経験から、大学生活がもたらす効果も感じている。
「帰る場所、拠り所があると余裕も生まれますし、その人に味を加えると思います。何もないからこそ必死になって成功する人もいますが、私は違いました。芸能界とは別の世界を持てると、仕事も新鮮だし、様々な感覚も養えます。
何が自分に向いているのか、好きなのかを知ることができますし、異なった世界観がもたらす相乗効果もあると思う。自分の将来の可能性が複数あるというのは良いことだと思いますね。色々な顔があった方が女性も男性も魅力的だと思います。大学時代はその時にしかない宝物なんです。
年を重ねた後改めて勉強しようと大学に入ることももちろんできるけど、パワーがいるし、やはり若い時の感覚とは違う。お金はないけど自由はあって、大人と子供の中間、ある意味中途半端な年頃。そういう年代だからこそ輝くものがあると思います」
【プロフィール】さいとう・けいこ/1961年7月14日生まれ。宮崎県出身。1982年、JAL沖縄キャンペーンガールに選ばれ芸能界入り。以後、女優として活躍し、映画『東雲楼 女の乱』では日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞したほか、NHK大河ドラマ『秀吉』、連続テレビ小説『わかば』などに出演する。2017年4月から慶應義塾大学大学院メディアデザイン科在学中。
取材・文■石田伸也
※週刊ポスト2018年11月30日号