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高額報酬ワンマン社長がいる会社の「平均年収」の出し方

年収格差の大きい企業の平均値は「算術平均」では意味がない

 高額報酬の過少申告容疑で逮捕された日産自動車のカルロス・ゴーン前会長ほどでないにせよ、中小企業でも経営トップや役員が給与を貰いすぎて、「平均年収」を引き上げているケースはあるだろう。平均にもいろいろある。本当に知りたい平均値を出すにはどうしたらいいのか。ニッセイ基礎研究所・上席研究員の篠原拓也氏が解説する。

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 自然科学でも社会科学でも、データをあれこれと加工して、そこから仮説や命題を裏付けたり否定したりするような結果を導く。こうしたデータの加工のうち、頻繁に行われるのが、「平均をとる」という作業である。

 通常、平均は、データを抽出した元の集団の傾向を表すものと考えられている。このため、確率論や統計学では、平均に関する定理が多く、その考察が欠かせないものとなる。

 平均は、小学校の算数で割り算をマスターした後に、高学年くらいから身につけるものだ。各データの値を足し算した結果を、データの個数で割り算して、平均が計算される。たとえば、ある学校のクラスで生徒の平均身長を求めるには、各生徒の身長の合計を生徒の人数で割ればよい。これは、「算術平均」と呼ばれる。もっとも単純で、わかりやすい平均である。

 しかし、算術平均が役に立たない場合もある。たとえば、ある高級青果物店では、リンゴを1個400円、ミカンを1個100円で売っているとする。ある日、この店でリンゴが200個、ミカンが600個売れたとする。リンゴとミカンをあわせてみたときの、平均単価はいくらだろうか。

 この場合、2つの単価の算術平均である250円〈=(400+100)÷2〉には、意味がない。平均単価を求めるには、合計の売上高を、合計の売上個数で割り算する必要がある。売上高は、リンゴ8万円、ミカン6万円で、合計14万円。これを合計の売上個数800個で割り算した、175円が平均単価となる。これは、「加重平均」と呼ばれる。

 また、成長率や伸び率など、物事の変化を表す率の平均には、別のものが必要になる。預金の利率で考えてみよう。

 預金の利率は、複利で表すと扱いやすい。これは、最初に預けた元本と前年度までの利息の合計に対して当年度の利息が付く、という利殖の仕組みを反映した数値だ。ある銀行の外貨預金で、利率が1年目は10%、2年目は2%と、大きく変化したとしよう。このとき、2年間の平均利率は、いくらだろうか。

 算術平均の6%ではない。元本として100万円を預けた場合で考えてみよう。1年後には、元本に10%の利子がついて110万円となった。2年後には、この110万円に2%の利子がついて、112万2000円に増加した。つまり、2年間で1.122倍に増えたわけだ。1年間でみると、1.122の平方根をとって、1.059倍ほどに増えることを意味する。つまり、平均利率は約5.9%となる。これは、「幾何平均」と呼ばれる。

 つぎに、速さや濃度や圧力といった、何かを何かで割り算して得られる比について、平均を求めることを考えてみよう。ここでは、小学生向けの時間・距離・速さの問題が有名だ。

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