そんなカラクリが広まってか、福袋人気は往年ほどではありません。2015年頃から福袋の売れ行きにはブランド間で格差が生まれるようになりました。もちろん発売前から行列ができるブランドもありますが、1週間後もまだ福袋が残っている店もあり、“二極化”が進んでいます。恐らく2019年の正月はその格差がもっと広がることになるでしょう。
売れないブランドは福袋を3割引や半額にしてやっと売りさばけるという状態で、ただでさえ利益率の低い福袋を値下げして売るという本末転倒が起きているのです。
ただ、そこまでブランド格差が開き始めているのに、福袋をやめるブランドはいまだに出てきません。なぜでしょうか。そこにはアパレル企業特有の「目先の小銭に飛びつく体質」が色濃く反映されているからです。
もうかれこれ10年以上福袋を売り続けていると、福袋の売上高が実績として計上されています。売れないと言っても、1日に5個くらいは確実に売れますから、価格が1万円だと1日あたり5万円の売上高はあるわけです。それが正月5日間売れると、25万円の売上高が発生します。
それこそ「アパレル不況」ですから、福袋の代わりに1日に5万円の売上高を稼いでくれるような商品はそう多くはありません。ですから売れていないブランドでも福袋を廃止してしまうことができないのです。
目先の1日5万円の売上高を捨てきれないことがアパレル各社の現状です。ですから、今後、余程ひどい売り上げ不振に陥らなければ、福袋が廃止されることはないといえます。もちろん、売れているブランドはこの限りではありませんが、売れていないブランドは思考停止のまま“惰性”で福袋を存続させるほかないのです。