提出された告発状

 A氏は心臓が通常より肥大化し、血液を適切に全身に送れなくなる拡張型心筋症と僧帽弁閉鎖不全症を患っていた。原因不明であるケースが多く、悪化すると心臓移植が必要となる難病である。

 そのA氏に施されたのが「マイトラクリップ手術」だ。脚の付け根から心臓までカテーテルを挿入し、左心房と左心室の間にある僧帽弁の先端をクリップで繋ぎ合わせ、血液の逆流を減らす手術で、従来の開胸手術より患者の負担が大幅に軽減される。日本では2018年4月に保険適用が始まったばかりの治療法である。

 手術を担当したのは、同術式の豊富な経験があると医療ニュースサイトなどで紹介される、東大病院循環器内科のK医師だった。だが、手術から16日後の10月7日午後2時5分、A氏は息を引き取った。

 件の告発状では、この処置について以下のように指摘していた。

〈不適切な医療行為により死亡した〉〈その死に至る過程では、単純な過失による医療事故のみでは片づけられない数多くの不適切行為が行われ、無念の悲痛な最後を迎えたのであります〉

 1月初旬、宛先である東京都福祉健康局を訪ねると、担当者はこう述べた。

「告発状の存在は我々も把握しています。すでに東大病院には都として立ち入り調査に入っており、検証が終わるまでマイトラクリップ手術を中止するよう指導してあります。

 この術式は高難度新規医療技術に当たり、保険適用下の治療に際しては慎重な運用が求められる。過去の実施症例において、なんらかの疑義がある状況のままでは、施術が行なわれるべきではないと判断しました」

関連記事

トピックス

夜の街にも”台湾有事発言”の煽りが...?(時事通信フォト)
《“訪日控え”で夜の街も大ピンチ?》上野の高級チャイナパブに波及する高市発言の影響「ボトルは『山崎』、20万〜30万円の会計はざら」「お金持ち中国人は余裕があって安心」
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン