ケチャップやマスタードを好きなだけかけて食べるアメリカンなスタイルではなく、味のバランスが緻密に計算されている日本独自のハンバーガースタイルである。いってみれば食材が“口中調味”で交ざり合うことで完成される逸品なので、具材を積み上げていく順番もしっかり意図されている。
そしてラーメンの味を決定づけるスープに相当する「ミートパティ」は基本的に店舗で仕込まれている。原料肉として使う牛肉は、原産国や部位を製作意図に合わせて選び、粗く挽いて成形する。
本書でも紹介した「NO18 DINNING & BAR」(東京都豊島区)という格別にミートパティ作りに情熱を持つ店では、米国産のチャックアイロール(肩ロース肉)をまるごと塊で仕入れている。
それを極限まで脂身を取り除きつつ10部位まで分解するように肉片のカットサイズを切り分け、再度ブレンドすることでミートパティの食感や味わいの複雑さを出していくというこだわりの職人技が見られる。塊肉のコンディションは個体によっても異なるので、日々肉と対話するように、その日に思い描く状態に魂を入れて仕上げていくというから驚きだ。
このように、ハンバーガーらしきメニューが乱立している中でも、真のグルメバーガーを味わえる店はある。今後、ミシュランガイドにカテゴリーが設定されれば、「立派な料理」として高いレベルのハンバーガーを提供する店はさらに増えていくはずだ。
グルメバーガーが檜舞台に立つ日が来ることを願ってやまない。