仕事を通してひとまわり大きく成長した美空は、卒業後の進路を変更することに。大切な家族の死も経験した後で、こんなふうに思う。

〈人を送る仕事をしているうちに、いつの間にか気づいていた。死は特別なものではなく、自分の近くにも必ず訪れるものだということに。どんなにつなぎとめたくても、するりと指の間を通り抜けてしまうものだということも〉

 葬儀の場で漆原が静かに口にする、〈ほどなく、お別れです〉という言葉。定型のようなこのせりふが、小説を読んだあとは、ひときわ厳粛で、あたたかなものに感じられるはずだ。

【プロフィール】ながつき・あまね/1977年新潟県生まれ。大正大学文学部日本語・日本文学科卒業。学生時代は古典文学を専攻した。現在は、飲食業勤務。2018年、『ほどなく、お別れです』で、第19回小学館文庫小説賞を受賞(応募時タイトル「セレモニー」を改題)しデビュー。子どもの頃から小説を書き始め、完成させたのは本作で5作目。夫が亡くなったのが9月の雨の日だったので、この「長月」というペンネームを選んだ。好きな作家は北方謙三、皆川博子。163cm、A型。

■構成/佐久間文子 ■撮影/五十嵐美弥

※週刊ポスト2019年2月8日号

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