以上のRoや集団免疫などの考え方は、感染症の数理モデルの最も基本的な部分とされている。実際には、この数理モデルを発展させて、
・感染しておらず免疫を持っていない人(今後、感染・発症する可能性がある人)
・すでに感染している人
・感染から回復して免疫を持っている人
の3つのグループに集団を分けるなどして、それぞれのグループ間の人の推移を方程式で表示して、より複雑な分析につなげている。(こうした数理モデルの詳細については、専門書に譲ることとする)
なお、感染症に関する数理モデルについては、いくつか限界があるとの指摘もある。たとえば、
・そもそも性別や年齢などの違いによって、感染の仕方が異なるはずだが、モデルはこれを無視している
・感染して発症した人は、医療施設に入院したり、自宅で療養したりするため、他の人との接触の機会が減るはずだが、そうした点をモデルは加味していない
・本来、感染経路によって感染確率は異なるはずだが、モデルは感染経路を1つに限定している
こうした数理モデルの限界をよく認識した上で、感染症を分析し、理論的に、感染拡大に備える取り組みが、進められている。
日本では、毎年、秋になると、インフルエンザの予防接種が勧奨される。また、定期的に、乳児・幼児向けに、BCG、水痘、日本脳炎など、さまざまな予防接種が行われる。一方、65歳以上の人向けには、肺炎球菌ワクチンの予防接種が行われる。しかし、ワクチンの種類によっては、接種率がなかなか高まっていないものもある。
集団免疫の考え方を理解したうえで、毎年予防接種を受けてない人は、まずは受ける習慣をつけてみてはいかがだろうか。