2015年、国内で行われた人工関節手術は約8万件。ここ10年で2倍に増えたという。ひざの痛みも手術で治す時代の到来ともいえるが、新潟大学名誉教授の岡田正彦医師は待ったをかける。
「そもそもどんな手術も、体に大きな負担をかけます。メスを入れることで体力や免疫力は低下するし、麻酔の副作用もある。手術すればよくなると思われがちですが、デメリットも考慮して、必要のない手術は極力受けないようにすべき。実際、ひざの手術も人工関節を入れた方がいいのかどうかは、はっきりしていない。人工関節のメーカーがスポンサーになった調査では、それ以外の調査に比べ11倍も『症状がよくなった』と結論づけるなど、データが疑わしいのです」
腰痛の手術も、大西さんは「効果は期待できない」と指摘する。
「腰の手術はアメリカでも、ビジネスとして急成長しています。毎年50万人が腰痛で手術を受けています。米保健福祉省によれば毎年110億ドル以上を手術費に使っていますが、重篤な病気を除けば、手術でよくなるのは5%以下という報告もあります」
腹部に手術で穴を開けてチューブを入れ、栄養剤を注入する「胃ろう」は終末期医療における栄養補給法の1つ。しかし、アメリカでは「延命効果なし」が最終結論。
「チュージング・ワイズリーには、『認知症の人への胃ろうは意味がない』とはっきり書かれています」(室井さん)
そればかりか、害を及ぼすことすらある。
「胃ろうによる主な合併症は、栄養剤の漏れや嘔吐、下痢、皮膚の炎症など。認知症患者は苦痛をうまく伝えられないことが多く、重症化しやすい。アメリカでは多くの高齢者が事前に拒否する意思表示をしており、ムダな胃ろうは減ってきています」(大西さん)
乳がん治療は日進月歩で研究が進み、がんのタイプや進行によって手術の方法も細分化され、切除する部分も少なくなった。室井さんが言う。
「たとえば、がんが乳房にとどまっていれば、近くのセンチネルリンパ節だけを切除し、センチネルリンパ節にがんが多く見つからなければ、わきの下のリンパ節は取りません。というのも、治療は必ず副作用が伴うからです。再発の不安を減らすため、多めに切除することがスタンダードだった時代もありますが、今の基準では不要です」
※女性セブン2019年2月21日号