『「首尾一貫感覚」で心を強くする』著者の舟木彩乃氏

 そんな最愛の妻に先立たれた野村元監督の精神的なダメージの大きさは想像に余りあるが、ストレス・マネジメントの観点から見ても、沙知代夫人の不在は野村元監督にとって大きな痛手になっているのではないか、と舟木氏は推測する。その理由は、沙知代夫人の口癖だった「大丈夫よ」という言葉にある。

「野村元監督は、生前の沙知代さんについて『どんなことが起きても“大丈夫よ”、最後の言葉も“大丈夫よ”だった』と、インタビューで答えています。沙知代さんといえば、サッチーの愛称で親しまれながら、一方でその強気な発言などからさまざまな形で世間を騒がせてきました。その彼女が言う『大丈夫よ』からは、“今までなんとかなってきたんだし、これからだってなんとかなるわよ”という強気の姿勢がうかがえます。

 これは、別名ストレス対処力とも呼ばれる『首尾一貫感覚』の一つ、『処理可能感』の高さに通じるものです。この『大丈夫』という言葉は、大きなストレスを抱えていたり、精神的に弱っていたりする場面で威力を発揮する、万能のキーワードなのです」(舟木氏)

◆陰で支えた最高のサポーター

 たとえば、勉強や仕事で悩んでいる時に、先生や上司、先輩などから「大丈夫」と言われると、誰しもそれだけで心強く感じるのではないだろうか? もちろん、誰に言ってもらえるかによって印象も違ってくるが、それまで自分の悩んでいたことが小さなことのように感じられ、急に元気が出てきた──といった経験をした人も多いだろう。

 そんな「処理可能感」を含めたストレス対処のカギとも言われる「首尾一貫感覚」は、大きく3つの感覚からなっている(参考:舟木彩乃著『「首尾一貫感覚」で心を強くする』)。

■把握可能感(=「だいたいわかった」という感覚)──自分の置かれている状況や今後の展開を把握できると感じること。

■処理可能感(=「なんとかなる」という感覚)──自分に降りかかるストレスや障害にも対処できると感じること。

■有意味感(=「どんなことにも意味がある」という感覚)──自分の人生や自身に起こることには意味があると感じること。

 舟木氏によれば、これら3つの感覚を高めることで、不安やストレスを軽減することができるようになるという。そして、沙知代夫人の口癖でもあった「大丈夫」は、この「処理可能感」を高め、安心感を与える効果があると考えられるという。

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