その治療実績を信用して受診したA氏に対し、同センター心臓血管外科の教授は早期の手術を勧め、9月上旬に手術を受けることが決まった。
ところがその後、同センターからは入院日や手術日の連絡がなく、A氏は困ってしまったという──。この頃、医療関係者の間をひとつの噂が駆け巡っていた。ある大学病院に勤務する医師が語る。
「病院関係者や医療機器業者などの間で、“自治医大さいたま医療センターの心臓血管外科手術がストップしている”との話が広まっていました。大学病院が外部への告知もなく手術を止めることは異例の事態で、関係者に衝撃が走りました」
何があったのか。取材を進めていく中で、一通の文書を入手した。
〈御報告〉と題されたA4一枚のその書面は、自治医大さいたま医療センターの心臓血管外科のB医師が、あるクリニックのC医師に宛てたものだった。
C医師は、大動脈瘤を持つ患者が同センターで手術できるように、B医師に紹介状を書いていた。文書の日付は平成30年8月9日。C医師による患者紹介に感謝の意を表する一方で、こんな記述があった。
〈実を申し上げますと、当センター心臓血管外科手術において合併症が発生し、原因究明のためスタッフ一同全力を尽くしております。そのため開心術および重症患者様の手術は中止が妥当と判断しており、この状況が改善するまでに今しばらく時間がかかりそうな状況です〉
文書には明確に「開心術及び重症患者の手術は中止」と記載されていた。