また、今回の出来事の最大の問題は「患者不在」で進んだことにあると中川弁護士は強調する。
「心臓血管手術において合併症リスクは避けられないものではありますが、自治医大さいたま医療センターは、手術の中止から再開、原因調査の結果まで、内輪だけで行なわれており、患者にはほとんど何も説明がなされていない。これから通院する患者たちも、この病院で死亡例を含む複数の合併症の発症事故があったことを知らないままです。病院側は患者への説明責任を果たしているとは到底言えません」
一連の経緯について、自治医大さいたま医療センターに質問すると、次のような回答だった。
「心臓手術後の消化管合併症(非閉塞性腸管虚血)の疑い事例について、医療安全上の検証を目的として、自主的に予定の開心術を一時中止した上で、外部専門家を招聘し調査を行ないました。対象症例には1例の死亡症例が含まれていますが、これは予期せぬ術後死亡事例ではなく、医療事故調査制度に該当する症例ではありませんでしたので、医療事故調査・支援センターには報告しておりません。
手術の延期などに関して、患者さんに病院にお越しいただいてご説明した際、交通費相当として3000円相当の商品券をお渡ししました」(総務課)
また心臓血管外科の手術について「開心術については、すでに再開しております」(同前)とするものの、再開を判断した理由の説明はなかった。