◆手渡された商品券
さらに取材を進めると自治医大病院の関係者と接触できた。
「昨年5月から8月にかけて、心臓血管外科で手術を受けた6人が術後に重大な合併症を発症しました。死亡した患者もいます。一連の事故を受けて、院内で調査が始まりました」
予期せぬ死亡事故が発生した場合、病院側には所在地の保健医療部もしくは保健所に報告が求められる。
取材に対し、さいたま市の保健所は、「術後に合併症が起きた」との報告を自治医大さいたま医療センターから受けたことを認めた。
「報告があったのは昨年の9月7日です。『5月から8月にかけて、心臓血管手術後に非閉塞性腸管虚血症(腸循環障害により腸管が壊死していく病気)が6例発生した』という内容でした。患者が死亡したかどうかについては、報告を受けていません。
4か月で6例というのは多いと病院が判断し、9月から手術を中止して、外部の識者などを入れて治療方法の見直しを行なっているとのことでした」(さいたま市保健所医務係)
昭和大学横浜市北部病院循環器センター教授で心臓外科手術の権威として知られる南淵明宏医師が語る。
「心臓手術において、非閉塞性腸管虚血症が術後に発症した場合、患者の救命は極めて難しい。それが短期間に6件も立て続けに発生したならば、病院側の技術に何らかの問題があるかもしれません。心臓疾患は、症状の悪化が命に直結する病です。そんな患者たちを大勢抱える大病院が、開心術全般を一定期間中止するということは異例のことです」